同一労働同一賃金で、期間工はどう変わるか?(後編)

期間工にとって
良いことも悪いこともありそうです。

これは後編の記事です
前編の記事はこちら

予想される期間工の状況変化

前回の記事の最後に、
同一労働同一賃金によって
期間工に起きる変化を、
予想として以下のように3つ挙げました。

1.正社員、または無期契約社員への
登用がこれまでよりも活発になる。
合格率も高くなりハードルが下がる。


2.同じ期間工の中でも、
給与が同じではなくなる(ランク制の導入)


3.正社員の解雇規制が緩くなると同時に
期間工も解雇が簡単になる。


今回は後編の記事として、
1つずつ順番に説明していきます。

1.正社員登用または無期登用の活発化

同一労働同一賃金とはつまり、
「雇用形態の違いによる給与の差をなくす」
ことであると同時に、
「責任やできる仕事が増えれば給与は増えるし、
 できることが同じままなら昇給はない」

ということでもあります。

そうすると、
できることが増えず
給与が上がらないままの正社員。
できることがけっこう増えて
給与も追い越している期間工。
こういうちぐはぐな状況が
発生しやすくなります。

この状況をあるべき状況にただすとするなら、
できることが増えないままの人を
社員から降格させるか、
もしくは給料を追い越している期間工氏を
社員に昇格させるようになるでしょう。

つまり、正社員登用の活発化というのは、
正社員になりやすくなるというよりも
責任と能力がダイレクトに
給与に反映されるようになるため、
社員と期間工でも業務内の序列が
入れ替わりやすくなるということです。


おそらくは、
社員登用の制度もこれまでより
簡素化かつ明確化されると思います。
そのための新制度として予想できるのが
業務ランク制です。

2.同じ期間工の中でも、給与が
同じではなくなる(ランク制の導入)

ランク制は、ユニクロなど一部の企業では
以前から採用されているやり方です。
行える業務内容と、責任能力の範囲に基づいて
ランク分けして明確化するというものです。

例えば同じ期間工でも
3つのランクを設定するとします。
例えなのでわかりやすい名前をつけるとして、
熟練期間工・標準期間工・見習い期間工
としましょう。

「見習い」はある1つの工程しか
こなすことができません。
「標準」は自分の持ち工程以外に、
代打で入れる工程が1つ以上あります。
「熟練」は自工程、代打工程に加えて
自チームのライン全体を
おおむね理解、把握しています。

これまではこの「見習い」と「熟練」も
同じ期間工、同じ給料として
扱われてきましたが、
同一労働同一賃金が導入されると
「熟練」が任される仕事が多い分、
賃金が上乗せされなくてはなりません。
もしも熟練が見習いと同じ給料で
働かされている場合、
給与状況が適正でないことについて、
熟練は会社側に対して
質問する権利を得られます。
(同一労働同一賃金導入以降)

つまり、ランク制が導入されると
予想されるのはこういった給与トラブルを
未然に防ぎやすいからです。
見習いは1工程しかできないから、おいくら。
熟練は色々やらせているから、おいくら。
あらかじめこう定めるようにすれば、
現場からしても仕事を振っていい
範囲が分かりやすいですし
同一労働同一賃金を
スムーズに導入していくことができます。

ここからは前項の話と繋がるのですが、
期間工が「熟練」ランクにまで達すると、
責任のうすい正社員との
境界が非常に曖昧になります。
仕事のやる気や印象、人柄次第では
どっちが社員か期間工か分からない、
という状況にもなりうるでしょう。

これまでは、そういう状況になっても、
正社員のほうは年功序列だったり各種手当で
「熟練」よりも良い給料を
もらえる場合が多かったわけです。
しかし、客観的にみて
ほぼ同一の仕事である両者は
同一の給料で扱われるようになっていきます。
同一労働同一賃金とは、そういうことです。

また、同一賃金で雇っているのであれば、
会社側からみたときの
両者の給与的コストは同じですから、
熟練氏を社員にいっそあげてしまったり、
逆に社員氏をランク下げすることも
これまでより簡単になってくるでしょう。
社員と期間工の業務内の序列が
入れ替わりやすくなるとは、そういうことです。


つまり、仕事ができる人が
上がりやすくなることで
社員登用は一見活発化しますが、
誰でも上がりやすくなるわけではありません。

ただ、同一労働同一賃金を発端に
解雇規制が緩くなってくると、
そもそも社員・期間工といった区分けが
あまり意味をなさなくなってくる
でしょう。

3.正社員の解雇規制が緩くなると同時に
期間工も解雇が簡単になる。

これまで日本の企業において、
企業側・使用者側が正社員を解雇することは
とても難しいという状況にありました。
労働に関する法律が
関係していることはもちろんですが、
年功序列によって同じ会社に
勤め続けることのメリットが大きいことや、
正社員のみに与えられる手当などの存在により
「正社員を簡単に解雇してはならない!」
という雇用者側の強い反発があったからです。

しかし、前項で書いた
「責任のうすい社員」と
「熟練期間工」の両者間には
給与的な格差はほとんどありません。
言い換えれば、
同一労働同一賃金によって、
格差を作ることができなくなります。


そうすると、
責任のうすい社員氏は
ぜったいに解雇されたくない!と
しがみつくメリットがなくなってしまい、
社員解雇に対する反発は非常に弱まるでしょう。
居座り続けても、お給料は据え置きだからです。

解雇に対する反発が弱まって、
法律が変わり、
企業側が社員を解雇しやすくなると、
同時に社員を新しく雇用しやすくなります。
以前のように
「一旦雇ってしまったら解雇できない」
というリスクが非常に低減されるため、
とりあえず働かせてみてから判断しようという
楽観的な採用もしやすくなるのです。

こうなってくると、
熟練期間工は、現在よりもはるかに簡単に、
社員に登用されることできるわけです。
いや、そもそも正社員・期間工
といった区分けも必要なくなり、
単純に熟練氏はひとつ上のランクに昇格し、
責任のうすい社員氏は
ひとつ下のランクに降格する、
それだけのシンプルな話になるでしょう。

ランク制が採用されるのでは?と予想するのは、
社員・期間工の区分けが必要なくなったときに、
同じ土俵で評価するシステムとして
移行しやすそうだからでもあります。


期間工というのは、
正社員の解雇しずらさ、
企業側の雇用リスク・ためらいから
回避策として生み出された存在です。
ゆえに正社員の解雇・雇用が簡単になり
雇用環境が流動的になってくると、
期間工という”特殊な”存在も無くなるでしょう。

期間工は中途採用枠の一部として吸収され、
全員が一般社員として採用されるようになり、
仕事ができればランクアップするし、
問題があればこれまでよりも
簡単に解雇されるようになるでしょう。

「昔は”期間工”ってのがあってさー」と
昔話をするような未来も
そう遠くないのではないでしょうか……。

最後に付け加えると、
雇用環境の流動化によって
新卒の扱いもこれまでとは全く変わります。
これまでは「40年近く働くかもしれない」
という重みのあった門が、
「卒業後に最初に入る会社」
に過ぎなくなります。
会社側としても
「これから40年近く
 面倒をみるかもしれない相手」
ではなくなります。
“新卒カード”という言葉も
その頃には昔話の一部になるでしょう。

就職市場における新卒の意味の変化により、
元は“期間工”という名前だった中途採用の門は、
いい意味でも厳しい意味でも変化するでしょう。